4.高温燃焼に耐えられるストーブの出現

ではこの高温燃焼する針葉樹の薪は、宝の持ち腐れなのでしょうか。いいえ、決してそうではありません。この針葉樹の薪、特に高温燃焼するカラマツの薪を思う存分焚くことのできるストーブがあります。それが私どもが普及しようとしている「信州カラマツストーブ」です。

このストーブは今からもう30年も前に完成していました。製作したのは同じ信州の諏訪市在住の石神さん達のグループです。このグループは大のストーブマニア。

聞くところによると何年もかけてストーブの本場ヨーロッパからアメリカにかけてほとんどのストーブやその他燃焼器具を見て歩き、その後は日本の古来からの燃焼器具を調べて、そこから現在の「信州カラマツストーブ」(当時はそう呼んでいなかった)を考案したと言うことです。

この話はとても興味深いものですが、それは又後に述べるとして、ここでは高温燃焼に耐えられる材質という点に絞ってみたいと思います。

高温に耐えられる鉄とはどんな鉄なのか。実はそんな鉄はストーブ以外にも様々なところで使われています。高温にさらされる炉などの部品、火災に耐えられるビルの柱などなど、これらの鉄を総称して「鍛鉄」と呼ぶそうです。

鍛鉄とは、その名の通り鍛えた鉄です。この鍛えると言う技術は日本のお家芸で、日本刀を作るとき、鉄の大槌と小槌で刀身を打ち続ける様をみたことがおありかと思いますが、打つ事で内部の炭素を均一にすると言われ、このことで強靭な刃物が出来るわけですが、同時に熱にも強い鉄が生まれると言うわけです。

このような鉄を炉本体に使っているために、カラマツストーブは900度という高温にも耐えることが出来るのです。又四角の炉本体は、一枚の鉄板を折り曲げて一箇所だけを溶接しています。このような形状をコラム鋼と呼びますが、溶接個所を最小にする事で熱の伝導をスムースにします。

更にその一番弱い部分である溶接個所を炉の底に持ってきて、灰を溜める下にしたことで熱伝導を和らげる配慮もしています。