2.広葉樹の薪と針葉樹の薪

広葉樹とは葉の広い木々の総称です。ナラ、クリ、サクラ、シラカバ、などですが、薪として広く流通しているのがナラの薪で、今までは「薪」と言えば、「ナラの薪」というほど一般化しています。

広葉樹の中では比較的火力が強く、火持ちが良いことから、炭に焼く原料としても古来から使われてきました。針葉樹とは皆さんもお馴染みのスギ、ヒノキ、マツ、カラマツなど葉っぱが針のように細い木々を総称した呼び名です。

この中のマツ、特にアカマツはこれも古来から陶磁器などを焼く窯で使われてきました。

薪と一口に言っても、広葉樹の薪と針葉樹の薪では、それを燃料として焚いた時、月とスッポンくらいの違いが出てきます。その第一は熱量の違いです。

広葉樹の薪ではいくら大量に燃やしてもその発熱量は約400度~500度までですが、針葉樹の薪を燃やせば800度~900度の熱量を得られます。

何故こんなに大きな違いが生まれるのか、それは樹木が持っている樹液の違いによるものです。樹液は木々にとっては生きていく上で必要な成分です。

特に環境に順応するうえで必要であったり、怪我をしたときそこを治癒するうえで必要な成分なのですが、ここでは人間が勝手に切り倒して薪として利用する上での話として考えてみたいと思います。

針葉樹の薪を燃やしたときの発熱量が広葉樹の薪を燃やしたときより二倍近い発熱量になるのは、この樹液の性格からくるものです。

それは針葉樹の持つ樹液が「ヤニ」と呼ばれる可燃性の油脂であるのに対して、広葉樹の持つ樹液は不燃性であるからです。

広葉樹では薪として切り割られた後乾燥しますが、その時この不燃性の樹液も蒸発してしまい、乾燥後の薪には残りません。ですから、乾燥後の広葉樹の薪は、残っている木質部の有機物のみは燃えると言うことになります。

一方針葉樹の持っている樹液は可燃性の油脂で、乾燥しても蒸発散せず樹木内に残るため、これを燃やせば、有機物と一緒に樹液、ヤニも燃えることになり、このヤニの燃焼分がプラスアルファとなるために燃焼熱が高くなるというわけです。

ちなみに針葉樹の薪の中でも樹種によって発熱量に違いがありますが、これも樹種による樹液、ヤニの成分に違いがあるためです。最も高温になるのがカラマツ、次いでアカマツ、ヒノキ、スギと続きますが、その差は全体でも50度~100度くらいでしょう。また、樹木の中に入るのかどうか定かではありませんが、竹も可燃性の樹液、ヤニを持っているので広葉樹を上回る熱量を発します。

もう一つ付け加えれば、広葉樹の中の桃の樹やナナカマドの樹は、不燃性の樹液が乾燥しても完全に蒸発せず樹木内に残るためジュブジュブと燻っていてなかなか燃えてくれません。ナナカマドは七竈と書くくらい、七回かまどで焚いても燃えないと言い伝えられています。